入札で評価されるのは、完全に見た目だけ。

確かに黒くて色艶が良いほど、栄養価があるのは間違いありません。(真っ白い海苔、黄色い海苔、食べたくないですよね。)

2009年、おかげさまで品評会で優賞を受賞できたことを機に、これからの海苔の未来を考えた時には、「良い海苔＝美味しい海苔」を作らないと、食べた時に喜んでもらえないし、安い外国産ばかり求められる時代が来るんじゃないかって考えるようになりました。

最初は、一番摘みを使った最高級の海苔から美味しさを目指しました。当時は、有明海に負けないような口どけを持った海苔を目指しました。厳選の他に、極選、飛びといった、高級パッケージに入れたものも作りました。一帖￥1,000でした。かなり自信作の海苔でした。

そのうち、海苔の美味しさ＝柔らかさ、口どけが全てではないって思ったんです。プロの職人相手には一番摘みで勝負できるのですが、一般の人には向いていない。それは、価格も、用途も、両方です。

家庭用で普段海苔を食べるのに、毎日高級な食べ方ばかりではないはずです。おにぎりにしたり、子供がおやつにしたり、遠慮なく家族皆でたくさん食べるのに、そう高価なものである必要はないんです。

なぜなら、一番摘みは酢飯には最適なので手巻きや鮨には抜群ですが、おにぎりにすると葉が柔らかすぎるため、溶けてベチャベチャになってしまう。もう少ししっかりした海苔でないといけない。葉の柔らかさ、口どけは逆にマイナスになると。

つまり、それぞれの用途にあった摘み番手で、美味しい海苔はいくらでも作れるって思いました。一番重要なのは、自分にしか出せない「味」だと。

安心してご家庭でたくさん買っていただける価格に設定し、地元のママ達に喜んでもらえるんじゃないかって、常識を打ち破る大胆なパッケージを作りました。大当たりでした。(笑)

4回目に摘んだ四番摘みの海苔なので、一番摘みから摘み番手を重ねるごとに、葉がしっかりしてきています。

マグロもそう、牛肉もそう。一番高価な大トロやA5肉ばかりが一番美味い訳ではないように、高いものが一番良い訳ではありません。

一番摘みは、一番目に摘んだ柔らかい海苔ですが、あくまで「摘み回数」の番手のことを指し、美味しさの順番ではないんです。

四番摘みはすぐに溶けない分、口の中に海苔本来の旨みが広がります。味の濃さがしっかり含まれていることがわかるはずです。