2018年8月6日-10日、デンマーク王国・ロラン島にて
【ワークショップ・研修報告】風土、国民性、知識、色々な面で素晴らしい国でした!
「国際サマーアカデミー2018:私たちの未来 食の世界」
東松島市と震災復興に向けた連携及び協力に関する協定を締結している、北欧・バルト海の入り口に位置するデンマーク王国の「ロラン島」で行われた、
世界的視野で食の未来を考える1週間のインターナショナルサマースクール
僕は8月9日のDAY4・オーシャン担当として招待していただきました。
僕は海苔の項目で話すため準備をしてましたが、実際デンマークの海を見て、考えが変わるほど衝撃を受け、
デンマークの人たちからも多くを学び、国や世界の未来について考えさせられる素晴らしい経験をしました。
僕に課せられたミッションは大きく二つ。
まず一つ目は、日本の海苔や漁業のこと、海、大地、川、農業、林業、畜産、国境のない地球上の自然、日本人の食や自然との関わり方や、未来への想いとか世界の人たちに伝えること。
世界には海苔も海藻も食べない国が多いので、逆に楽しみに、日本の皆さんとの関わりや取り組みも、皆さんに代わって紹介してくるつもりで準備しました。
二つ目は、発表日までに現地を視察して、「北ヨーロッパの海で海苔養殖が可能か否かを話すこと、自然に対しての向き合い方とその意義を自分なりに伝えること。」でした。(役割重大です。。。)
このように僕が世界へ飛び出せたのも、これまで日本でたくさんワークショップをさせてもらった経験がなければできないことでした。
今まで関わってくださった皆さんに感謝するとともに、その思いも一緒に運んで行ったつもりです。デンマークは自然溢れる文化、豊かな素晴らしい国だったので、僕が経験して学んできたことなど、皆さんに報告したいと思い、少しづつ時間をかけて振り返りまとめました。長くなりますがよろしくお願いします。
◎はじめに…サマースクール概要/お世話になった皆様ありがとうございました!
8/6−10滞在期間の研修項目は、僕の海苔や海に関する屋内外でのワークショップのほか、チェリーワイン、世界中に販売している野菜の種の会社、昆虫クッキング、野外博物館、頭足類(イカやタコ)、環境食糧省や生物学者の話しなど。
「国際サマーアカデミー2018:私たちの未来 食の世界」(日本語訳ページ)
◀︎左:2001年からロラン島在住のコーディネーター・ニールセン北村朋子さん、東松島をはじめ日本各地各団体へのコンサルティングやコーディネーターをされ、今回僕のワークショップの通訳もしてくれました。
▶︎右:サマースクール担当者・ニコライ氏です。
◀︎左:今回随行してくれたのは東松島市教育員会生涯学習課・スポーツ振興班主事・菅原久義さんです。
▲中央:デンマーク王国の駐日フレディ・スヴェイネ大使もサマースクールへお越しくださいました。
※震災後20011年6月、2017年10月に渡っってフレデリック皇太子が東松島に来てくださるなど、これまで物資両面で多大なる支援をいただいているデンマーク王国の皆さんに、今回貴重な機会をいただいたので、ぜひワークショップでわずかばかりでも恩返しになれば、との意気込みで準備しました。
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、復興「ありがとう」デンマーク王国のホストタウンとして、東松島市が選ばれました。
◎現地視察…農業・自然エネルギー大国の豊かな島。しかし海は。。。
現地日時8月6日(月)15:30頃、コペンハーゲン空港に到着しました。車で約2時間、橋続きの島を渡った「ロラン島(Lolland島)」のMariboという町のサマースクールまで、車窓はほぼ「畑・農地・風車」というデンマークを代表する豊かな景色が続きました。
世界幸福度ランキングで毎年上位に位置するデンマーク王国は、酪農・畜産・農業大国で有名ですね。また、自然エネルギー大国としても有名で、風力発電やバイオマスエネルギーをはじめとした再生可能エネルギー先進国ですが、このロラン島の自然エネルギー比率は700%とも言われていています。「パンケーキ」とも呼ばれるロラン島には高い山が全くなくて(最高所の標高が25mらしいです、、、)、見渡すほどに農地が広がっていました。コンビニはありません。
海に囲まれた豊かな島なのに、ロラン島には漁港がありません。
基本、水産物もそんなに食べません。
日本と同じ島国なのになぜでしょう。その話はあとでします。
まずは、ワークショップのための事前視察&研修報告から。
◎研修・視察報告
■Vikima seedという、デンマーク・フランス・アメリカに拠点を持つ種苗会社で、講義と工場見学
ハイブリッドの野菜や花の種、いわゆるF1種と言われる第1世代交配の種を世界に輸出している企業です。
日本にもここから相当量が輸出されてます。
もちろん遺伝子交配されたハイブリッド種です。
僕たち日本人が食べている「国産の野菜、〇〇産の野菜」、その種はどうやってできているのか知っていますか。農家さんが農協で買い、その種を種屋さんが代理店を通じて、多くは海外の交配種苗会社から来てるんです。
育った野菜の種から、また来年同品質の野菜を育てることはできません。1回限りなので、毎年買い続ける必要があるんです。
交配されたハイブリット種苗は、
・人口増の食糧を安定的に供給するために、
・安定収穫できる農家のために、
・形も整って、見た目が美しくて、味も均一なものを好む私たちの食を支えるために、
・食べ残す人らの廃棄分も含めて
今や世界中の大きな産業ビジネスとして成り立ち、大きな役割を果たしています。
これは世の現実です。
食べ物を作る一人として、考えさせられました。
普段自然の中に身を置く自分からすると、これは「食べ物」の元というより、人間が生きるためだけの化学工業製品に思えました。
■デンマーク最大のチェリーワイン工場 Frederiksdal Kirsebærvin A/S
広大な敷地と工場。白い建物はワインラベルに描かれている社屋。かなり大きな建物でした。
添加物なし、甕の形したガラス瓶の上からキャップをかぶせる形で天然発酵をするそうです。
チェリーの種類、グレード、熟成、発酵度合いなどによってラベルが異なるそうです。
広大な不動産を所有し、先代まで商業や農業で大成功していたそうですが、ワイン作りはなんと現社長の代から。フランスやいろんなところで学んで、来てもらって、はじめたのだそうです。
■Fejo島(ファユ島)事前視察
僕のワークショップの日は、Mariboのボートハーバーからフェリーで移動した「ファユ島」での出張授業!
事前に島の方が小舟を出してくれるとのことで、海の視察に行かせてもらいました。
ずっと楽しみにしてきたデンマークの海です!
今回のミッションの一つ、ヨーロッパの海で海苔養殖が可能か否かを確認するためにきました。
やっぱり海に来たらワクワクしてしまうので、どうしてもニヤケが止められません。笑
ニコライが潜って現地の海藻を採って来てくれました。
独学で海藻を研究している現地の方が、食べれるって言ってました。色の薄い黄緑の海藻の先端にある二股の裂け目の部分が、唯一食べることができるらしいです。(メジャーではない)
Fejo島で海藻を研究している地元の方です。
僕はかろうじて自生する青のり見つけたので、青のりの養殖方法や種付けを全部教えました。一生懸命聞いてくれました。
同じデンマークでも北海やフェロー諸島の方では漁業は営まれてますが、このあたりではほぼ行われていないそうです。
僕には、この海はなんとかギリギリで生きてるって感じがしました。この視察から特に、この地の環境を未来につなぐために必要なことを真剣に考え始めました。
■昆虫食クッキング Bugging Denmark社
近い未来に訪れる人口増と食糧難。
栄養価の高さも着目ポイント。
「昆虫食のススメ」講義とクッキング。
栄養価の高さは頭では理解できるけど、いくら薦められたところで、普段食べることのない生物に対する苦手感や拒否反応をいかに受け入れられるか。調理でごまかせば毎日食べられるのか。
って観点は、世界の多くの人にとって、多分海苔や海藻も少なからず同じだと思いながら、できる限りフラットな気持ちで参加しました。デンマークのスーパーマーケットでも少しづつ取り扱いされていて、今後さらなる需要拡大を目指しているそうです。
スーパーで販売されているパッケージです。調理前、まずはこのままの状態で一口味見してみたら、、、想像以上に苦手でした。。。※初心者の人、加熱前の味見は絶対におすすめしません。
そして、昆虫食が主食にならざるを得ない未来は絶対に作らないと、改めて強く思いました。
当たり前のように食べ物に困らない国は平和の象徴だ。
4グループに分かれて4種類のメニューを作りました。一応僕もちゃんと作りました。作ってる間も、試食した加熱前の虫のヤバさがずっと口の中に残ってて正直それどころじゃなかったです。
ちなみに養殖コオロギは白っぽい薄い色でした。
■Mariboの野外博物館 Frilandsmuseet
デンマークの民俗文化と農民文化の歴史を遺す野外博物館です。
茅葺き屋根の家屋、石垣、ネコみたいな運搬車とか、日本の歴史と通じる部分もありました。
教育先進国とも言われるデンマークの国の象徴的な話しを聞きました。
昔から村ごとに必ず大きな木があって、この樹の下で全員で話し合って物事を決める文化があったそうです。大人も子供も年も立場も関係なく、顔色を伺うこともなく、全員が話し手の意見をしっかり尊重し合って、しっかり考え平等に話し合う国民性が育まれて来ました。
物事は偉い人が決めるし、そうじゃない人は意見を聴いてもらえないから話さなくなる、反対意見をいうと罰をくらう、または対立する、話す機会がなくなれば考え意見をもてなくなる、責任も薄くなる。偉い人のいうことに従ってればいい。そんな受け身の国ではないんです。
現代では環境先進国のデンマークですが、過去国が原子力発電の案を出した時、国民的議論から不採用となって、風況の良いデンマークの環境を活かす風力発電を広めるきっかけにもなり、その後、自然エネルギー事業はこの国の経済をも立て直すことになります。
自国の産業について国民が考え、意見を述べ、民意が尊重される国ならではの、素晴らしい関係性だと思いました。
この次の日、僕のワークショップだったんですが、とにかく遠慮なく積極的な質問が多くて驚いたんです。話す人と聞く人、という一方的な関係じゃなくて、「一緒に考える時間を共有する」感覚です。
だから遠慮もしないし、真剣に聴いてる、しっかり質問してくれるんですね。
すごかったです。
昔、ヨダレの正体がわからないときの話し。
ベットが小さいんです。そこで二人で寝たり。横になって口開いて寝るとヨダレでますよね。ヨダレってことがわからない昔は、「口から何かがでてくる」って現象でしかなかったから、「体内の内容物が出て死んでしまう」って思って、寝るのを怖がってたらしいです。だから、ほとんど横にならないように立って寝たりしてたらしいです。笑
◎海を見て未来を考えた。この海を救うのは海藻じゃないか。
8月9日帰国前日、ついにDAY4:The Ocean 僕のワークショップ担当の日。
この日までデンマークの海を視察したり、いろんな学びを元に、僕の考えを伝える日が来ました。
栄養豊富すぎて。農業優先すぎて。海が。。。
海がどういう状態か、視察してすぐにわかりました。
世界中どの海も、全てナニカの結果だからです。
日本でドライブしてて海が近くなると、わずかに磯の香りや匂いがすると思います。「磯の香り」の正体は、実は主に海藻とプランクトンです。
栄養の豊富な日本の海では当たり前の香り、だから透明度の高いビーチや海にはそれがない。
僕が見たこの島近郊は、逆に大地からの栄養が豊富に豊富すぎて、ただ生臭いだけの匂いが滞留している感じでした。
海藻類は喜んで大繁殖しようとするものの、密集して光が届かず死滅する、を繰り返している形跡が僕には見えました。
なぜならここデンマークは農業酪農王国です。
なだらかな大地の多くが、農地・耕作地。
日本の場合、国土の約3分の2が山、農用地はせいぜい12−14%くらい。
なんと、デンマークでは国土の約60%が農用地、養豚・酪農も盛んです。
写真はないんですが、小川を見たときも水が茶色でした。汚れじゃなくて、畑から流れ出る農業排水の栄養濃度が高い証です。
日本のような森林もないため、濾過するはずの大地そのものが、栄養の塊みたいなものです。
海の栄養「窒素・リン・カリウム」が海に滲み出過ぎています。
なのに、海は手付かず。漁師もいない。海藻、海は苦しんでるように見えました。
びっくりしました。
Google mapの航空写真で見るロラン島は、
ぱっと見モザイクかかったように見えます。
モザイクに見えるのは全部農地だから。
デンマーク全体的+近隣もこんな感じ、
圧倒的農業酪農王国です。
■この海を活用すべき。宝の海です。国と人を更に成長させられる源が有ります!
国として成長するために農業酪農を基幹産業として培って来た先人たちの過去はさておき、
新しい人達はこれから未来に向けた環境作りがスタートできます、後はやり方だと思います。 これはどこの国にも言えます。
日本では、栄養塩不足による磯焼けや海苔の色落ちなどが環境課題になってて、
日本のワークショップでは「農業や森林、大地の大切さ」を伝えていることも話しました。
そしてこの国は逆、海の富栄養化による貧酸素水塊が問題だと伝えました。
環境先進国として、農業・大地の他に、「海」を新たな資源として活用してほしい。
放置するにはあまりにもったいない。海苔漁師の僕にとっては、驚愕するほど宝の海です。(僕が海苔やりたいくらい。)
問題は、自然的にやるのか化学的にやるのか。
下手くそな例えですが、黒いインクを落とした水をどうやって元に戻すか考えた時。
色んな色のインクを落とし透明に近づけるが、透明にならないから、終いには漂白剤を入れて「透明」と言うのか。
僕なら蒸留で透明にする。
熱を使うとかじゃなく、自然に有る物を活用し余分な有機物を取り除く。
無機物を生まないことが、未来にとって第一優先だと思います。
■海・人・自然全体がよくなる方法を。
デンマークの海の状態をみなさんに伝えました。
陸上やバイオエネルギーにしか目を向けていないわけではないだろうし、これまで農業排水を減らすための取り組みもされたそうですが、それって限界がありますよね。
みなさんに大事な農業・酪農を、海のために減らせといわれても無理ですよね。
食べ物・文化・宗教は押し付けるつもりないんです。
サマースクールの期間中、僕はずっと考えました。
どうしたらいいと思いますか。
デンマークに自生している「青のり」を養殖することで、
海に流れる農業肥料を青のりに吸収させ、
自然的に海を豊かに蘇らせて、
海を新たな資源として活用して、
長期的に次世代につなぐ事業にすればいいと、考えを伝えました。
海は雨を降らせますし、農業と全く無関係じゃないんです。
本当は黒海苔を伝えに行く予定だったが、そんなレベルの海じゃないし、現地に自生してなかったので止めました。
なんと言っても、海苔は食べられるからです。食糧難が目前の近い将来、輸出してもいいじゃないですか。
海苔は、農業排水による富栄養「窒素、リン、カリウム」を吸収して育ちます。
光合成をして酸素を生み出します。地球上に酸素を生み出したのは海藻・藻類です。魚も豊かに育つようになるでしょう。
余るほど大漁に育てられるようになれば、養殖原料にするとか、バイオマス事業に活用するとか、そのときはじめて二次利用すればいいと僕は思います。
※日本での取り組みや食文化、海との関わり方や考え方も、デンマークの皆さんとしっかり話してきました。海を海として生命を感じるためには、食べ物と関連づける必要があると思いました。
The Oceanのワークショプ会場は、Fejo島の幼稚園小学校が一緒になったスクールでした。
Fejo島はロラン島からフェリーで15分ほどの小さな島、1時間くらい歩いた場所が会場です。体育館の予定でしたが明るくてスライドが映らなかったため、教室内を借りました。
童話みたいな学校でした〜
Fejo島はりんごの島として知られてます。道中に店はなく、どこでも無人販売スタイルです。甘過ぎず酸っぱく、自然のりんごの味って感覚思い出しました。
室内ワークショップの後は、入り江の桟橋で屋外研修。僕は海藻先生になりました。笑
現地の海藻研究家から聞いた、唯一食べられるらしいと言う、先端が二股に別れた謎の海藻の可食部部分を乾燥したやつです。みんなこの二股海藻を集め出して、生でバクバク食べてました。
■頭足類(イカやタコ)、環境食糧省の話
■Ole G. Mouritsen コペンハーゲン大学教授の講義
このサマースクールは、食の未来を考えるインターナショナルスクールです。昆虫食があったように、タコ・イカのススメ的な話でした。デンマークの人たちには宇宙生物に見えるんでしょうね。
■RasmusEjrnæs オーフス大学生物学者および上級研究員 と
モルテンエーニャンス 環境・食糧省部長 の講義
人間が、人間以外の動植物に与える影響等についての話だったように思います。そんな話の中、前日僕のワークショップを受けた海を活用する話を意見する参加者がいて僕は驚きました。この国には海を活用するための専門の政府機関がないみたいです。偉い人の話とか関係なく、思ったことや良くするための考えを普通に皆んなバンバン言うんですね。すごいと思いました。
以上、「自然を支点に」どこまでも考え抜くのが今回のミッションだと思い、向き合いってきました。
今回一緒に参加した人達は強い想いを持ってる人ばかりで嬉しかったです。
「やりたい事」を「やって来た事」に、誰かの燃料になる人達なんだなと感じました。
負けてらんねー、もっともっと自分は燃料になるよう頑張ります✨ ありがとうございました!
目指せ世界平和!
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雅代 (金曜日, 14 9月 2018 04:07)
とても読みやすく、スラスラと心に染みました。肥沃な大地の流すヨダレを海苔に変えて世界を救うのね。それが愛なのね。
東松島~日本~アジア~世界を私は東松島を選んで住んでいるのだから、相澤太を目指す子供を誇りに思う子供を増やしたいと思います。もっと詳しく聞きたいです。ありがとうございました。関口雅代より
相澤 (土曜日, 15 9月 2018 13:29)
ありがとうございます!
相澤 (日曜日, 17 3月 2019 01:51)
奥松島の海苔を生まれてからずっと食べ続けてきました。海苔の事を調べていたらこのサイトに偶々出会いました。
本当に相澤さんが感じる自然に対する思い、考え方、伝え方すごく考えさせられましたし、どんどん話に吸い込まれる様に、夢中になりました。
とても素敵な考えをする方ですね!ありがとうございました!
相澤○子