牡蠣の殻が真っ黒に見えるのは、びっしり詰まった「海苔の種」です。
海苔をはじめとした海藻類の多くは、”冬”の生き物です。
自然界では、海底の貝殻や岩などの中に潜り込んで夏の期間を過ごし、秋・冬を待つんですね。貝殻の中に、横に枝を張るように、胞子を作って膜を張るんです。
養殖の場合は、数日間水温を下げた海水に浸けることで
人工的に秋を感じさせ、海苔の胞子を育てます。
牡蠣の殻の中で過ごしてきた海苔の胞子は、
秋を感じるとすくすくと細胞分裂をはじめます。
続く。
▼2016.8.15撮影 岩海苔の細胞の様子です。(※下の写真をクリックすると拡大されます。)
水温の低下と日照時間の短かさにより秋を感じ、細胞分裂した海苔の種は、いよいよ貝殻から胞子を放ちます。
何かに付着して根を張り成長を重ねることで、冬にかけて葉っぱが育っていきます。
僕らの養殖では、水車とプールを用いて、胞子を網に付着させます。
数日の間、水温と日照時間を調整しながら、
十分な細胞分裂の経過を観察し、胞子を放つピークを管理します。
そして、いざ網に付着させる大切な作業を「種付け」と言います。
海水温がまだ高い8月末、
海ではなく陸上で行うため、「陸上採苗」と呼ばれます。
この「種付け」ができなければ、この年の海苔は作れないため、
海苔の育成にとって、第一関門ともいえる真剣勝負の作業です。
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※岩ノリ品種は、狙い通りに胞子が出ない(=全く読めない)
超特殊品種のため、この種付け作業が最大の難関です。
(スサビノリは共同水車での種付け作業を行います。実際には組合でのスケジュールが先に決まるため、狙った日に胞子がでるよう、種の入荷日段階から全て逆算して、管理・調整をしています。)
狙い通りに胞子を放出しているか。適切な数が網に付着しているか。
目視できないミクロの海苔の胞子は、網の一部を切り取り、顕微鏡で確認を行います。
ひと視野に何個の海苔の胞子を付けるか。
一見、多ければ多くつくほどたくさんの海苔が育つように思います。
海に出した時に胞子が流れ落ちてしまう(芽落ち)リスクのために、
多く付ける人もいます。これは漁師の判断で全員違います。
伸びる海苔なのか、味がいい海苔なのか、
今後どのような海苔に育ってほしいのか。
アイザワ水産の海苔作りは、この段階すでに方向性を決めています。
だから、一分一秒のスピード勝負。
ちょうど良い芽数が確認された瞬間、速やかに網を取り外し、海水プールへ移動。
集中力とスピードを連続的に要する作業のため、毎年一家総出で向き合う一大イベントです。
水温が高いため、一度海苔網を冷凍します。
秋を待って海に出します。宮城では9月20日頃。
それまでの間に、育苗湾の浮上筏の設置や大曲浜の海上(本養殖)共同作業など、超特急で作業します。
※海苔の胞子は寒さに強く、冷凍しても仮死状態で生き続けています。
続く。
岩ノリ品種の養殖は、矢本では自分一人しかやっていません。全国でも数人です。それくらい難しく、リスクも高いのに、めでたく成功したところで何より採算が全く合わないんです、そりゃ誰もやりたがらない(笑)
そのため組合全体では、黒海苔(板海苔)になるスサビノリ品種の種付けが、本番の焦点となります。
僕は、今年のスサビノリの種付け期限は8/29から9/2までと決まっているので、
その前までに岩ノリの種付けが終わるように、余裕をもって早い段階から特殊な個人水車を仕立てて、
今年も岩ノリに挑んでました。が…
▼8/27 本来はもう種付け完了してるはずが、
いまだに全く種がつかない。。。。
種の到着以降、台風も来たり、天候気温も悪く、
完全に調子(機嫌?)を崩してしまいました。。。
今年はもう、岩海苔で作る金のばら干しできないかもしれません。。。
とか言いつつ、諦めない。絶対種とってやる!
岩海苔種付け完了!
ついに完成しました~、今回は本当に条件悪くかなり厳しい戦いになりましたが
本日リミットギリギリで勝ちました!
と同時にスサビ海苔の種付け開始です。明日は台風。何事もなく無事にやり過ごしたいです。
心配下さった皆様、応援して下さった皆様、無事に種とれました。ありがとうございました!!
アイザワ水産、海苔の種付けが順調に完了しました。
心配していた台風直撃も、そのギリギリ前に突貫できました。
岩海苔からドキドキバクバクの種付けでしたがスサビ海苔も順調に終わることが出来ました!
とりあえずホッとしてます。応援して下さいました皆様ありがとうございました。
今期は台風や自然災害が多いと予想してます、気を抜かずシッカリ自然に向き合うつもりです。
海苔と直接関係ないかもしれませんが、大切な話します。
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僕の住む町、東松島市は四つの浜があります。
ともに主力は「海苔と牡蠣」なんですが、牡蠣が8/30の台風10号で甚大な被害にあいました。。
東松島の牡蠣、凄く美味しいんです。色々な産地の牡蠣食べたけどやっぱり美味いんです。
環境が良いのは勿論ですが、
やはり人です作る人間がどんな想いで手を掛けるか、これが一番だと思います。
東松島の牡蠣漁師、、これまたとんでもない人間ばかり。
生産量はとんでもなく少なくなるでしょうが、是非食べて下さい、知らなきゃ絶対損します。
めったに言いませんが海苔漁師相澤太の名にかけ、自信を持っておすすめします。
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海苔の種付けは無事に完了しました。これから大事な育苗です、気を抜かずシッカリ自然と向き合います。
今年も9月20日解禁日から海苔の種網を海に出しました~、スクスク元気モリモリ!
早速喜んでますね~。 これから約2週間、海苔にとって最も大切な赤ちゃん期を過ごします!
どこかに海苔の胞子が見えるかな?※土星ではありません。
◀▼2016年9月24日、倍以上の長さに!写真拡大して胞子数えてみてください😊
(海苔の細胞は、一つの胞子から細胞分裂するので、2個→4個→8個→16個…と、倍々に伸びていく姿が確認できます。日々元気に成長している証です。)
種付け(陸上採苗)で網についた海苔の胞子はその後、海の栄養塩を吸収し、細胞分裂を繰り返しながら成長していきます。人間に目に見えないミクロの状態から、目視できる大きさに育つまでの期間を、「育てる苗」と書いて、育苗(いくびょう)と呼びます。
育苗期間は人間の赤ちゃんと同じように、これから育つ海苔の一生を左右する最も重要な期間です。
僕たち矢本の漁場は太平洋の外洋・荒波が直撃する場所に位置しているため、育苗期間は川から流れる栄養を吸収できる穏やかな湾を別に借りて、網を張り込みます。
陸上採苗により種付けが完了した網は一度冷凍したのち、すぐさま育苗漁場準備、浮上筏(いかだ)の設置に取り掛かります。
僕が毎年借りている育苗漁場は、松島海岸にある松島漁協の松島湾。
秋を迎える9月20日。海苔の成長に適した海水温(23度以下)に下がる季節に漁場解禁を迎え、海苔漁師は約20日間の超集中期に入ります。
(ここを拡大してピントを合わせてみると…)
(ついに縦分裂したことがわかります!
どんどん成長しているので、写真からも見つけやすくなってきましたね。)
(一方こちらは横に長ーく伸びるタイプ。同じスサビノリでも品種の違いです。)
スサビ海苔です。
やっぱでぶっちょの岩ノリです。笑
番外編:天然青海苔